2026.10.01

第5回TranSEHAセミナー


篠崎 鉄哉(中央大学理工学術院社会理工学部都市環境学科・助教)
「創発的研究支援事業とは? −制度紹介と「津波の記録を掘り起こす」研究−」

 

2026年度より、科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業の採択課題「マイクロ・分子・遺伝子レベルで紐解く巨大津波の将来像」が始まりました。本研究では、地層中に残された津波の痕跡から、過去の巨大津波の規模や発生年代をより正確に復元することを目指しています。


これまで過去の巨大津波の解明には、津波によって運ばれた「津波堆積物」が利用され、その分布や年代から津波の規模や発生履歴が推定されてきました。しかし、従来の手法だけでは捉えられない津波の痕跡や、年代推定の大きな誤差など、いまだ多くの課題が残されています。そこで創発研究では、微化石、バイオマーカー、環境DNA、樹木年輪など、これまで津波研究で十分に活用されてこなかった指標を取り入れ、新たなアプローチからこれらの課題に挑みます。


日本は21世紀最大級の巨大津波を経験した国であり、津波研究の新たな展開を日本発で創出することには大きな意義があります。そのためには学際的な研究が不可欠であり、異分野の研究者や地域の専門家、時には地元の方々とも協働しながら研究を進めています。津波という巨大な現象を、マイクロ、分子、そして遺伝子レベルから詳らかにする。研究分野の垣根を越え、地域の知識ともつながりながら、地層に埋もれた巨大津波の記録を掘り起こしていきます。

 

石垣島の津波石。創発研究では、こうした目に見える巨大な痕跡とは対照的に、マイクロ・分子・遺伝子レベルの「見えない津波痕跡」の検出を目指します。

 

津波堆積物調査の様子。異なる分野の研究者、ジオパーク専門員、教育委員会関係者が現地で学際的な議論を行います。


地域住民が保有する津波で埋没した可能性のある樹木から、年代測定用試料を採取する様子。