2026.09.03

徳島三波川変成帯フィールド調査報告


三波川変成帯は、日本南西部を代表する高圧(HP)型変成帯です。主として白亜紀に形成され、その後、地表へ上昇した、かつての沈み込み帯複合体であると考えられています。関東山地から紀伊半島、四国を経て九州まで、約800 kmにわたって分布し、その大部分は、三波川帯とその北側の領家帯とを隔てる主要な構造境界である中央構造線(MTL)の南側に位置しています。
三波川帯は、主として泥質片岩、砂質片岩、珪質片岩、石灰質片岩、苦鉄質片岩から構成され、これに少量の変斑れい岩、超苦鉄質岩、チャート、エクロジャイト岩体などを伴います。これらの岩石は、海洋地殻や玄武岩質火山岩、海山、遠洋性堆積物、海溝堆積物、大陸起源の砕屑性堆積物などが沈み込み帯へ運び込まれ、変成作用を受けて形成されたものです。そのため、沈み込みに伴う地殻・マントル起源物質の移動やリサイクルを研究するうえで重要な研究対象となっています。
徳島県を含む四国東部には三波川帯が広く分布しています。考古地磁気研究グループの南教授と修士1年の佐藤さんは、イラン・クルディスタン大学のAzizi教授、徳島大学の安間教授、青矢准教授、名古屋大学の淺原准教授らとともに、2026年9月3日、4日に徳島県高越山周辺でフィールド調査を行いました。調査では、三波川変成帯に分布するエクロジャイト質青色片岩(ブルーシスト)および緑色片岩(グリーンシスト)、ならびに御荷鉾緑色岩類(変斑れい岩、苦鉄質千枚岩)を採取しました。
これらの片岩は片理が発達し、薄く剥離しやすいため、平坦な形状に加工しやすいという特徴をもっています。そのため、弥生時代中期の遺跡から磨製石器の石材として出土する例も多く、特に青色片岩は、緑色片岩と比較して良質な石材として利用されていたことが知られています。一方、緑色片岩は、含有する緑泥石などの影響により風化しやすく、この性質が石器石材としての品質にも影響している可能性があります。今後、採取した試料の岩石学的・地球化学的特徴を明らかにし、石器石材としての利用との関係を検証することで、石材の選択や利用、さらにはその供給・移動の解明への研究が発展することが期待されます。