2026.08.21

第4回TranSEHAセミナー


山本  裕二(高知大学海洋コア国際研究所・教授)
「地磁気永年変化を用いた須恵器窯跡の年代推定―滋賀県沢組遺跡における予察的検討」

 

 本セミナーでは、滋賀県大津市の沢組遺跡で発見された3基の須恵器窯跡を対象に、焼土に記録された地磁気方位から窯の操業年代と操業順を検討した予察的分析の結果と考察を紹介した。窯の床面は高温で焼かれた後に冷却する際、当時の地磁気方位を残留磁化として記録する。この方位を測定し、年代とともに変化する地磁気永年変化曲線と比較することで、最終焼成の年代を推定できる可能性がある。

発表では、発掘現場における焼土試料の定方位採取から、実験室での試料整形、段階交流消磁、残留磁化方位の決定まで、一連の分析過程を説明した。予察的分析の結果、3基の窯から得られた地磁気方位の変化傾向は、出土遺物などから考古学的に推定された操業順と整合的であった。ただし、現段階では分析試料数が限られており、今後さらにデータを蓄積して検証を進める必要がある。

本研究は、考古学的編年と自然科学的な年代情報を相互に照合し、遺跡の時間的変遷を検討する学際的な試みである。質疑では、窯ごとの古地磁気方位の差の解釈、地磁気永年変化曲線から想定される方位と一部の窯の結果が異なる要因、試料の採取方法と方位分析に供した部位について議論が行われた。

謝辞: 本研究の試料採取、磁気分析および考古学的検討にご協力いただいた大津市市民部文化財保護課の山﨑公輔様、大阪大学大学院の中久保辰夫様、およびTranSEHA考古地磁気研究グループの皆様に、深く感謝申し上げます。