2026.06.19

第3回TranSEHA若手セミナー「広域テフラ」実施報告


1.概要

若手研究者・大学院生を対象としたTranSEHAプログラムの教育・研究交流事業の一環として、第3回TranSEHA若手セミナー「広域テフラ」を2026年6月9日~10日に開催した。本セミナーは、大山火山および島根大学を会場とし、広域テフラ研究の基礎から応用までを学ぶことを目的として実施した。参加者18名であり、その内訳はTranSEHA側10名(教職員4名、PD3名、学生3名)、島根大学側8名(教職員2名、学生6名)であった。

初日は大山火山周辺においてフィールド調査を行い、広域テフラおよび大山火山起源テフラの露頭観察を通じて、テフラ層序や火山噴火史に関する理解を深めた。2日目には島根大学において、テフラ試料の処理・顕微鏡観察実習、講義および研究紹介を行い、広域テフラ研究の手法や最新の研究成果について学んだ。

2.実施日程

(1)2026年6月9日(火) 大山火山フィールド調査

奥野 充教授(大阪公立大学)、石賀 敏氏(鳥取地学会)、Andreas Auer准教授(島根大学)の案内のもと、大山火山周辺の代表的な露頭を巡検した。大山池、服部、草谷原、鍵掛峠、御机、笠良原など計7地点を訪問し、姶良Tnテフラ(AT)、大山倉吉軽石(DKP)、キリン沢火砕流堆積物などを観察した。各地点では、テフラの層相、広域対比の方法、噴火様式の違いについて解説があり、参加者は火山活動とテフラ形成過程について理解を深めた。また、枡水原高原(みるくの里)や鍵掛峠展望台から大山火山の山体地形を観察し、眺める方向で大きく異なる山容を実感した。

(2)2026年6月10日(水) 島根大学での実習・講義

午前中は、奥野教授による「広域テフラとは」と題した導入講義が行われ、その後、テフラ試料の水洗処理と顕微鏡観察実習を実施した。参加者は火山ガラスや鉱物の観察方法、テフラ同定の基本技術について学んだ。続いて、Auer准教授による講義「Petrology of Daisen Volcano」が行われ、大山火山のマグマ供給系や岩石学的特徴について解説がなされた。午後には、平峰玲緒奈特任研究員(国立歴史民俗博物館)による「海底火山と漂着軽石」の講演、Erika Vivas Cruz氏(島根大学・M2)による「Latest Holocene activity at Daisen volcano: Insights from petrography and geochemistry of Kirin-Sawa eruption deposits」、一井 新氏(大阪公立大学・M1)による「大山火山新期最下部テフラのマグマ噴出量階段図」に関する研究発表が行われた。さらに、Auer准教授によりテフラのジルコンU-Pb年代測定に関する研究事例が紹介された。その後の総合討論では、広域テフラ研究の将来展望や他分野との連携可能性について活発な意見交換が行われた。

3.まとめ

本セミナーでは、フィールド観察、試料処理実習、顕微鏡観察、講義および研究発表を組み合わせることにより、広域テフラ研究に関する実践的な知識と技術を体系的に学ぶ機会を提供することができた。特に、大山火山を対象とした現地観察と島根大学での実習を連続して実施したことで、野外で観察したテフラ試料を実験室レベルで解析する一連の研究プロセスを体験することができた。また、英語による講義や研究発表を含めたことで、国際的な研究交流の場としても有意義な機会とな

った。さらに、宇宙地球環境科学、火山学、地質学、考古学など異なる分野の研究者・学生が参加し、TranSEHAが目指す分野横断型研究ネットワークの形成と若手人材育成に大きく貢献した。

(南 雅代)

1日目:大山火山フィールド調査

2日目:島根大学での実習・講義