2026.06.02

第2回TranSEHAセミナー


川本  悠紀子先生(名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター・准教授)
「2026年1-3月ケンブリッジ在外研究報告 古代ローマ時代の庭園の復元を中心に」
 On Reconstructing Roman Gardens in Pompeii

概要:

 本研究報告では、ケンブリッジ大学に在外研究をしていた折のお話と、以前から、そしてかねてより行ってきた研究内容に関する報告を行った。

 Mitteilungen des Deutschen Archäologischen Institut, Römische Abteilungに掲載される論文、Reconstructing Roman Gardens. The Casa dei Vettii and the first Gardens in Pompeiiの内容でTranSEHAとも関連性があるものとしては、文献史料ならびに自然科学分析を用いた古代ローマ時代の植生研究が挙げられる。特に自然科学分析については、1960年代以降にWilhelmina F. Jashemskiが開始したポンペイの庭園発掘と、彼女が科学者たちに植物片・花粉、さらには動物の骨などの分析をお願いしたことがきっかけとなり、史料からだけではわからなかった内容にまで踏み込んだ研究が進められてきている。最近では、土壌からではなく、壁面の漆喰の中から花粉を抽出することで、漆喰が塗られた当時に浮遊していた、遺構に人々が居住していた当時の植生を明らかにする研究手法も登場している。

 筆者は、19世紀末にポンペイで庭園発掘が行われ、復元が盛んになる契機を作ったウェッティの家の庭園発掘について、現地踏査はもちろんのこと、写真、スケッチ、調査報告書、当時の論文、さらには官公庁の書簡なども用いて、庭園発掘とその復元が充分な検証をみないまま進められてきたことについてお話した。